1. 異次元の少子化対策とは何か?

岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」は、一見すると子育て世代を支援するための大胆な政策のように思えます。具体的には、児童手当の対象を高校生まで拡大し、所得制限を撤廃し、第3子以降の手当を増額するというものです。しかし、これらの政策の財源については詳細が示されず、その捻出方法は不透明です。
2. 扶養控除の廃止とその影響
この政策の一部として、児童手当の対象を高校生まで拡大する代わりに「扶養控除」の廃止が検討されています。現行制度では、16歳以上19歳未満の子供を扶養する場合、扶養控除の適用を受けられ、子供1人につき38万円が所得から控除されます。しかし、この控除がなくなると、所得税と住民税のダブル増税になる可能性があります。
年収が高い家庭では、児童手当の拡充よりも扶養控除廃止によるマイナスのほうが大きく、負担増になるケースもあります。例えば、年収800万円の人は、所得税率20%の水準にあたるので約10万9000円の増税になり、年12万円の児童手当があってもほぼプラスマイナスゼロとなります。さらに、年収1000万円の人なら約15万4000円の増税、年収1200万円なら約21万2000円も税負担が増えてしまいます。
3. 政策の効果とは?
「高校生に月1万円を支給する」という政策で本当に子供を産む人が増えるのでしょうか?「異次元の少子化対策」と銘打って児童手当を拡充するのであれば、子育て世帯の所得が実質的に月5万円、月10万円増えるというような思い切ったことをやらない限り、効果は出ないと考えられます。少子化は非常に深刻な問題で、改善されないと年金制度を含めたすべての社会保障制度が崩壊の危機に瀕します。しかし、選挙対策として聞こえのよさそうな話だけをして、財源も示さないというのでは、政府の覚悟は全く見えません。
4. 個人的な感想
私の意見としては、この政策は表面的には子育て世帯を支援するように見えますが、実際には一部の人々にしか恩恵が及ばず、逆に負担を増やす可能性があるという点で問題があります。特に、年収が高いとされる家庭でも、都心での生活費や教育費などで厳しい家計を抱えている人々がいます。これらの家庭にとっては、児童手当の増額よりも扶養控除の廃止による影響の方が大きいと考えられます。
また、政策の目的が少子化対策であるならば、単に手当を増やすだけではなく、子育てを支援する環境を整備することが重要だと思います。例えば、保育所の増設や教育費の補助、仕事と家庭の両立を支援するための制度など、より根本的な解決策を求めるべきだと思います。
最後に、政策を進めるにあたっては、その財源を明確にすることが重要です。財源が不透明なまま政策を進めると、後で予想外の負担が発生する可能性があります。政府は、その政策が誰にどのような影響を及ぼすのか、どのように賄われるのかを明確に説明する責任があります。